大学連携・学生受入

学生からの声 - 夏期休暇実習生 -

地質学試料の化学分析及び放射年代測定
(東濃地科学センター 地層科学研究部 ネオテクトニクス研究グループ)

※この実習の模様については、動画で視聴することができます。



米原 和哉さん(信州大学 教育学部 学校教育教員養成課程社会科教育コース)
小北 康弘さん(山形大学 理学部 地球環境学科)
髙橋 健太さん(弘前大学 理工学部 地球環境学科)
熊谷 秀平さん(弘前大学 理工学部 地球環境学科)
髙橋 大地さん(千葉大学 理学部 地球科学科)
増田 麻子さん(信州大学 理学部 地質科学科)
浅見 慶志朗さん(東北大学大学院 理学研究科 地学専攻)


米原 和哉さん

信州大学 教育学部 学校教育教員養成課程社会科教育コース

◇志望理由と実習内容について

現在、卒業研究では、新潟県北西部の高田平野西部、西頸城丘陵沿岸にみられるテフロクロノロジーを用いた海成段丘の形成年代と地殻変動の様式及び変動量の推定を行っています。また、調査範囲には完新世の海成段丘も分布することから、段丘の形成年代の議論のために約2万年前以降の堆積物の正確な年代を求めることが必要です。そこで、本実習により、東濃地科学センターの14C年代測定技術により年代を求めていただくと共に、14C年代測定法の原理及び前処理の方法について理解することで、自身が現地でサンプリングしてくる試料のサンプリング法、サンプルの選定基準及び保管方法の知識を得られるのではないかと考えて参加しました。

実習では、主に東濃地科学センターの施設、研究内容及び安全管理の徹底について見学やお話を聞いたのち、500m地下に降りて立坑を見学しました。そののち、年代測定に関する原理の学習や実際の前処理を行い、液体窒素を用いたエタノールの冷却や標準試料から炭素の精製などを行って、精製したグラファイトを実際に機器に移してプレス機でプレスするところまで行いました。実際に処理した試料では時間が不足してできませんでしたが、サンプルで算出されたデータから実際にエクセルなどを用いて年代の計算などを行いました。

◇困難に直面した時にどう対応したか

基本的に、担当してくださった職員の方々が、丁寧に日程や実習内容についての連絡を行ってくださったので困難はありませんでした。もし、何か困難があったとしても、気軽に話しかけたり質問したりしやすい雰囲気があり、解決できたのではないかと感じます。また、実習生同士も良い雰囲気で過ごすことができ、新しい仲間もできて非常に有意義な5日間になったと感じています。

14C年代測定に関する前処理では、初めて行う処理が非常に多く、スムーズに行うことができたとは言えませんが、実習用の試料として標準試料を用意していただく、事前にレジュメを作成していただくなどの御配慮があり、何とかやり切ることができました。

◇思い出に残ったこと

思い出に残ったことは非常に多いのですが、第一に普段の生活の中では見ることのできない実験施設や機器を見学したり実際に扱ったりしたことです。私自身は文系出身で、化学やその他の科学については深く学んできたとは言えませんが、私自身にも分かり易く解説してくださり、実際に目で見るので理科の実験をしているような気持ちになりました。また、地下500mに実際に降りてみるなど、体験的なことが多かったため、楽しく過ごすことができました。また、実習生との出会いも印象的で、新しい仲間が増えたことも思い出となっています。





小北 康弘さん

山形大学 理学部 地球環境学科

◇志望理由と実習内容について

<志望理由>
 夏期休暇実習については、指導教員からの紹介で知りました。本実習では、EPMAを用いた定量分析のほかに、カソードルミネッセンス像の観察を行わせていただきたいと思い、応募することにしました。自身の大学にはカソードルミネッセンス観察を行う装置が設置されていなかったので、この機会に観察し、その技術を習得したいと考えていました。

<実習内容>
 実習では、EPMAを用いて、石英のカソードルミネッセンス像の取得及びTi濃度の測定を行いました。カソードルミネッセンスについては、適切な条件を見つけるのが大変で、実習の後半になってようやく適切な像を取得することができました。Tiの定量では、自身の薄片に凹凸が多く、適切な分析値を得ることが難しかったですが、分析の手順など機器の操作に関する技術を学ばせていただくことができました。

◇思い出に残ったこと

自分のほかに実習生二人が、薄片を作成することが困難な試料を用いて研究を行っていました。未固結の試料や海底の堆積物から薄片を作る際、とても大変であるという話を聞き、自分が薄片を当たり前のように作ることができる幸せを感じました。

◇特にお伝えしたいことがあれば御自由にどうぞ

熱意と感心を持ち続けて自分の作業を行うことができました。また、質問をたくさんして分からないことを無くし、その後は、とにかく、自分でやってみようと積極的に行動してみました。





髙橋 健太さん

弘前大学 理工学部 地球環境学科

◇志望理由と実習内容について

東濃地科学センターが保有している加速器質量分析装置等を用いることによって、十和田湖の周辺で採取した試料に含まれる木片等の有機物試料について14C年代測定の実施をしたいと考え、参加いたしました。

五日間で行われた実習では、前半二日間は座学を中心に、後半三日間は実際に測定現場に足を運び、見学や作業の体験をしました。前半の座学では、14C年代測定を始めとする年代測定法の原理等基本的な事項を学びました。後半では、座学で実際に原理を学んだ加速器質量分析装置等を見学し、実際に14C年代測定を行うに当たって前処理を一通り体験しました。

◇困難に直面した時にどう対応したか

前処理の作業では機械の扱いに不慣れなこともあり、効率的に作業を進めることができませんでした。

また、作業の手順が分からない箇所も多くありましたが、指差し確認をしながらしっかり手順を追うこと、分からないことをそのままにせず、質問することで作業のプロセス及び目的を理解すると共に、作業も以前に比べ、しっかりと進めることができるようになったと思っています。

◇思い出に残ったこと

今まで遠い存在であると思っていた14C年代測定について、実際に実施している現場まで足を運び、前処理等を体験することにより、14C年代測定の原理等を理解すると共に、より身近に感じることができるようになったことが、収穫であり、思い出です。

ほかにも、瑞浪の超深地層研究所の立坑も見学させていただくなど、貴重な体験をすることができたことも印象に残っています。

また、寮では、五日間、ほかの実習生達と同じ部屋で修学旅行のような和気あいあいとした雰囲気の中で楽しい時間を過ごすことができました。

◇特にお伝えしたいことがあれば御自由にどうぞ

年代測定等について現場で学習し、体験できる貴重な機会です。年代測定の原理やプロセスをしっかり学び、これからの研究の糧にしてください。





熊谷 秀平さん

弘前大学 理工学部 地球環境学科

◇志望理由と実習内容について

私の大学の研究では、青森県日本海側にある鰺ヶ沢や十三湖付近の堆積層に存在する「津波堆積物」というイベント堆積物の調査をしています。過去の巨大津波の襲来時期、規模、時間スケールなどを明らかにするために、津波堆積物の前後の層あるいは津波堆積物そのものの年代測定をする必要があり、年代測定の内容や仕組みなどを理解することを目的として夏期休暇実習に参加しました。

実習は9月12日から9月16日まで5日間に渡って行い、1日目は主に実験室を見学し、概況説明などを受けました。2日目は、午前に講義を受け、実験の安全面に関する内容や手順、年代測定や測定機器の仕組みについて勉強しました。午後からは本格的に実験を行い、この日はガラスラインの作業見学、鉄粉の準備・還元、試料分取と洗浄を行いました。3日目はエタノールシャーベットの生成、ペレトロン棟の見学、ガラス細工を行いました。4日目はCO2の精製、酸洗浄を行いました。

◇困難に直面した時にどう対応したか

夏期実習では、実験の各手順で時間をかけ過ぎてしまい、スケジュールとは少し違う流れとなってしまいましたが、調整を数回行うことで最後まで実験を行うことができました。それ以外では特に困難や問題等はなく、無事に終了することができました。

◇思い出に残ったこと

分析機器や立坑など、普段使わない機器や行かない場所を見学して、良い経験となりました。他大学の学生と生活したり、講義や実験をしたりするのも初めてだったので、非常に思い出に残りました。





髙橋 大地さん

千葉大学 理学部 地球科学科

◇志望理由と実習内容について

私がこの実習を志望した理由は、放射年代測定の仕組みについて理解を深めて自分の研究に活かしたいと思ったからです。放射年代測定の一般的な原理は知っていますが、実際にどのような処理が行われているのかということは理解していませんでした。今回の実習では採取試料の前処理を行わせていただきました(主に木片)。水で余分な土を洗浄して、その後酸・アルカリ・酸処理を行うところまでの工程です。その他にも、液体窒素を用いた気体の分留の実験(最終的にCO2を取り出す)や加速器の見学及びその仕組みの説明、地下500mの縦坑見学などをさせていただきました。これらの貴重な体験によって、今まで知らなかった放射年代測定の仕組みを理解することができました。

気体の分留では、試料を処理したものを熱してCO2として取り出しました。試料を熱して発生する気体の中には、目的とするCO2以外に他の気体も含まれていました。それらの気体を鉄粉に反応させたり、液体窒素を用いて気体の分留をしたりして、目的以外の気体を取り除きました。また、最後に得られたCO2を二つに分けて、一つを標準試料用、もう一つを同位体ごとの割合の計測用にしました。これによって炭素同位体比を求めることができる、という実験でした。

立坑見学では、地下500mという場所まで行くことができ、非常に貴重な体験をさせていただきました。地下水の動きについて考えることができました。地下では、石灰岩が溶けていて、鍾乳洞でみられる石筍がありました。

加速器の見学では、装置の仕組みについて教えていただきました。希ガス質量分析装置からペレトロン年代測定装置まで見ることができました。原理的には、同じものでイオンを加速させて、質量の差で生じる軌道の違いで目的の14Cを検出するというものでした。実際に、間近で機械を見ながら説明をしていただいたので大まかな仕組みを知ることができました。

◇困難に直面した時にどう対応したか

まったく分からないという状況にはなりませんでしたが、実験の手順が分からなくなった時がありました。その時は、実験が何を目的としているのかを考えることで次に進むことができました。例えば、気体の分留の際に手順を迷ったとします。担当の方に、液体窒素でガラス管を冷やしてくださいと言われて、そのまま言われたとおりに作業を行った場合、その作業の意味が分かっていないまま次の作業をすることになってしまいます。そうならないために、なぜ、この混合気体を液体窒素で冷やすのかということを考えます。分留は物質ごとの沸点の差を利用したものですから、液体窒素で冷やしても固体とならないものが取り除かれる、といったように一つ一つの手順ごとに今自分が何をやっているのか、何を目的としているのか、ということを考えながら作業をしました。そうすることによって、迷わずに済みましたし、理解も進みました。

◇思い出に残ったこと

エタノールシャーベットの生成です。エタノールシャーベットとは気体の分留の際に用いる、-100℃程度のエタノールのことを指します。液体窒素で特殊な保温容器を冷やし、そこにエタノールを入れます。そして、そこへ液体窒素を少しずつ入れていきエタノールの温度を下げていきます。液体窒素に触れたエタノールは瞬時に凍ってしまうため、ガラス棒でかき混ぜながらの作業でした。そして、エタノールの温度が-100℃付近になるとエタノールにとろみがついてきました。この作業では、普段使うことのない液体窒素を使用できましたので、とても貴重な体験でした。また、エタノールにとろみがつく現象も不思議なことでしたので大変面白かったです。

◇特にお伝えしたいことがあれば御自由にどうぞ

私は土岐寮という場所に宿泊させていただいて寮生活をおくっていたのですが、寮のお風呂にボディーソープとシャンプーが備え付けでなかったので持参すると良いと思います。私はボディーソープとシャンプーをコンビニで購入して使いましたが、寮から少し離れているので持参することをお勧めします。また、自分のパソコンをお持ちの場合は、それも持参することをお勧めします。自分のパソコンがあれば夜の間に寮で実習の報告書の作成ができます。自分のパソコンを持参しなくても貸していただいたパソコンで作業はできます。しかし、デスクトップのものなので寮に帰ってからの作業はできません。持参しなくても困るということではありませんが、あると便利だと思います。





増田 麻子さん

信州大学 理学部 地質科学科

◇志望理由と実習内容について

志望理由は大学に設置されていない分析装置を使用できるからです。

実習内容は瑞浪超深地層研究所の立坑や土岐地球年代学研究所の施設内や分析装置の見学をし、実験内容や分析装置の解説をしていただきました。実習の申し込み時に使用を希望していた走査型蛍光X線分析装置で分析を行うため、職員の方に教わりながら試料をガラスビードにして分析をおこないました。

◇困難に直面した時にどう対応したか

特に困難には直面しませんでした。

◇思い出に残ったこと

ペレトロン年代測定装置やその他の分析機器を使うことで、断層の位置や活動時期を調べることができると知り、とても驚きました。また瑞浪超深地層研究所では、実際に立坑内に入って立坑内で行われている実験について解説していただいたのがとてもいい経験になりました。

◇特にお伝えしたいことがあれば御自由にどうぞ

今回の夏期休暇実習では東濃地科学センターの立坑に実際に入って実験の内容を聞いたり、施設内の研究設備なども見学でき、また原理などを説明していただきました。また職員の方々はとても親切で、装置の扱い方や原理や分析の方法などを丁寧に教えて下さり、非常に勉強になりました。使いたい分析装置がある方やそれ以外にも分析装置の原理などを勉強したい方は参加されることをおすすめします。





浅見 慶志朗さん

東北大学大学院 理学研究科 地学専攻

◇志望理由と実習内容について

就職活動の一環として自分の専門分野(地球化学)が生かせそうな就職先を就活サイトで探していた際に、日本原子力研究開発機構のインターン情報を偶然見つけました。志望理由はインターンの実習内容にICP-MS分析などの自分の研究に生かせる実習があったことです。また、就職先の候補として研究機関を考えていたので、国立研究開発法人である原子力機構のインターンに参加し、業務の様子や雰囲気、どのような経歴の人がいるかなどの情報を知りたいと思い、志望しました。

実習は主に東濃地科学センターの施設見学並びにICP-MS分析、ICP-OES分析及びXRD分析を行いました。施設見学は、土岐地球年代研究所の分析装置、瑞浪超深地層研究所の立坑及びペレトロン年代測定装置について行いました。ICP-MS分析及びICP-OES分析では、酸処理された試料について主要元素、微量元素及びREEを対象に分析しました。XRD分析では、粉末化した試料を用いて行い、Todorokiteが存在するかどうか確認するための分析を行いました。

◇思い出に残ったこと

分析に当たり、分析条件などを相談しながら丁寧に決めていただいたことが印象に残りました。また、職員の方とお話しする機会を得ることができ、自分の進路(博士課程進学か就職か)について様々な意見や事例を知れたことは貴重な経験となりました。大学にはない装置を含め、様々な分析装置の仕組みについても解説していただいたので、それらの特徴を理解した上で分析を行うことができました。この知識は今後も生かしたいと思います。



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