大学連携・学生受入

学生からの声 - 夏期休暇実習生 -

受動的安全性を持つ原子炉圧力容器の冷却設備に関する研究
(高温ガス炉水素・熱利用研究センター 小型高温ガス炉研究開発ディビジョン 安全設計グループ)



山口 修平さん(九州大学大学院 工学府 エネルギー量子工学専攻)
藤上 健太さん(山梨大学 工学部 機械工学科)


山口 修平さん

九州大学大学院 工学府 エネルギー量子工学専攻

◇志望理由と実習内容について

日本原子力研究開発機構の高温ガス炉水素・熱利用研究センターは、福島第一原子力発電所の事故のようにヒートシンクや冷媒を喪失することなく、動的機器及び非常用電源等を必要としない、原子炉圧力容器から放出される熱を受動的に除去できる、新しい冷却設備を開発しています。本研究の研究分担者である九州大学も、受動的な冷却設備を模擬した実験装置の設計及び製作を行い、除熱性能を確認する実験を行っています。私は研究を始めたばかりですが、研究が進展するに連れ、今まで分からなかったことが次々と理解できるようになり、非常にやりがいを感じています。一方、私は本格的な数値解析を経験したことがなく、教科書等で目にする「原子炉圧力容器」や「1次冷却系」を実際に見たことがないため、せっかく研究に携わるのであれば、実物の原子炉を見たいと思い、本実習に参加しました。

実習では、汎用の3次元熱流動解析コードを用いて、受動的安全性を持つ新しい原子炉圧力容器の冷却設備の解析手法を学びました。高温ガス炉や冷却設備の概要から、解析する上でどのようなパラメーターを重要視するのか、より少ない計算時間で複雑な体系を解析するにはどうすれば良いかなど、数値解析の普遍的な事項について御指導いただきました。

また、実習中、様々な興味深いイベントも開催されました。例えば、HTTRの原子炉建家の内部や核熱を利用した水素製造のための実験施設を見学することができました。また、夏期休暇実習生のための懇談会では、日本原子力研究開発機構の歴史などを紹介して頂き、実際に働いている技術職や研究職の方とお話しをさせていただきました。

◇困難に直面した時にどう対応したか

本実習では、熱流動の解析モデルを作成しましたが、自分の意図した解析結果が出力されない、計算時間が長すぎる等、様々な困難に直面しました。そこで、試行錯誤を繰り返しながら、直面している問題に関係がありそうな解析コードのパーツを全て書き出しました。その際、「このパーツは本当に問題があるか?」、については深く考えず、気になるものを全て抽出しました。次に、解析結果の問題点と抜き出したパーツの関連性に優先順位を付けました。最後に、優先順位に従って細かく調査しました。あるパーツを変化させると、直面している問題は解決できましたが、新たに別の問題が生じてしまったこともありました。原因が多過ぎて、調査するだけでも時間がかかりましたが、「失敗は成功のもと」と考え直し、試行錯誤を続け、最終的に解析モデルを完成させました。

◇思い出に残ったこと

様々なバックグラウンドを持つ方々とお話しできたことが強く印象に残りました。職員の方々はもちろんですが、実習に来ている学生達の出身大学や専攻が大きく異なっていました。そのような環境に身を置くことで、自分が常識と思っていたことが、実は間違っていたと気付くことができました。また、同じ研究職でも、大学と研究所では慣習が少し違っていることが分かり、社会人としての物の考え方にも触れることができました。過去の自分と実習後の自分を比較すると、最終的に、大きく視野を広げることができました。

◇特にお伝えしたいことがあれば御自由にどうぞ

職員の方々へ。貴重な時間を割いて、私を夏期休暇実習生として受け入れていただき、誠にありがとうございました。参加することで、当初、知りたい、体験したいと希望していたことだけでなく、他にも多くのことを学習できました。

大学ではない国立研究開発法人で行われている仕事に興味がある方、原子力工学の最先端に触れたい方へ、夏期休暇実習への参加をお勧めします。また、可能でしたら1ヶ月間の参加をお勧めします。やはり、ある程度の長い日数で1つのことに打ち込む方が、得られるものは大きいと思いました。





藤上 健太さん

山梨大学 工学部 機械工学科

◇志望理由と実習内容について

日本原子力研究開発機構が設計、開発、建設した高温工学試験研究炉(HTTR)は、茨城県の大洗町にあります。HTTRは、水の強制循環により、原子炉圧力容器から放出される熱を除去しています。

また、国際的に研究が進められている第4世代原子炉の一つ、超高温ガス炉(VHTR)は、受動的安全性を持つ原子炉圧力容器の冷却設備を求めています。

そこで、高温ガス炉水素・熱利用研究センターは、福島事故のようにヒートシンクを喪失せず、動的機器及び非常用電源等を必要としない、新しい受動的安全性を持つ原子炉圧力容器の冷却設備を開発中です。私にとって、研究開発の最前線に入り、実際に研究を経験できることは、「数少ないチャンスだ!」、と思いましたので、この実習を志望しました。

実習目的は、3次元熱流動解析コードを用いて、受動的安全性を持つ新しい原子炉圧力容器の冷却設備の解析手法を学ぶことです。実際に、解析モデルの形状を変更する際や境界条件を設定する際、その理由についてしっかり考える過程を、非常に丁寧に教えていただきました。また、得られた解析結果を評価し、考察する大切さについて御指導いただきました。

他にも、実習期間中、高温ガス炉の概要説明やHTTRの見学会、夏期休暇実習生のための懇談会、原子力科学研究所の見学会が開催され、日本原子力研究開発機構が実施している仕事の全体像をつかむことができました。

◇困難に直面した時にどう対応したか

実習中、解析モデルを作成しましたが、正しい解析結果が出力されないケースがありました。その場合は、解析の条件を確認しながら、解析モデルのパーツを一つ一つ細かく調査し、どこに不具合があるかを探し出しました。すぐにエラーの原因が見つかる場合もありましたが、なかなか見つからない場合もありました。また、一つの問題を解決しても、また新しい問題が発生する場合もありました。いずれの場合も、解析モデルのパーツを細かくチェックするしか方法はありませんでした。地道な方法を何度も正確に繰り返すことで、やっと正しい結果に至ることができました。

◇思い出に残ったこと

私は未だ学生なので、自分よりも目上の人とお話しをする機会は滅多にありません。実習中、出身や年齢も異なる人々が同じ目標に向かって働いている姿を見ました。自然と社会人になる意味を教えていただいた気がします。さらに、桜道寮で他大学の学生と交流したことで、自分の視野を広げることもできました。



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