大学連携・学生受入

学生からの声 - 夏期休暇実習生 -

原子力材料の強度特性と組織の相関評価に関する研究
(大洗研究開発センター 福島燃料材料試験部 材料試験課)


松原 正典さん

福井大学 工学部 機械工学科

◇志望理由と実習内容について

この実習を志望したのは、照射による材料特性の変化とそのメカニズムについて、また、原子力材料の基礎的な知識を身に付けたかったからです。私の大学での研究テーマは原子力材料を対象とした照射損傷ですが、原子力材料に対する知識があまりないため、実習を通して理解を深めて研究テーマに役立てると共に、研究者の方々や学生と交流をすることで学外の人たちとのつながりを作り、原子力に対する視野を広げたいという思いから参加いたしました。また、大洗研究開発センターには常陽を始めとする様々な施設があり、それらを見学させていただけることや研究所の雰囲気を肌で感じることができることも一つの大きな魅力でした。

実習は毎日がとても充実した内容でした。構成的には座学、施設見学、実験がバランス良く割り当てられていて、それぞれが質の高いものでした。座学に関しては大学の講義とはまた違う切り口での解説で分かりやすく、既知の部分は復習にもなりました。

施設見学ではMMF、FMF、AGFの3か所を見学させていただきました。研究対象が異なるため同じ設備でもそれぞれの目的に特化した設備となっていました。FMFでは燃料集合体を扱うため、ホットセルが小さく区画別ではなく一つの大きなホットセルになっており、天井も高く非常に広いスペースでした。AGFは映像ではあるものの燃料ペレット作製の工程を見ることができ、また照射済燃料の物質挙動を測定するためにホットセルからホットセル、装置から装置へと移動させる方法が良く考えて作られていると感心しました。MMFではマニピュレータの操作を体験させていただきましたが、思っていた以上に難しく、特に鉛ガラス越しで見るために距離感がなかなかつかめませんでした。さらにホットセルの中に入って作業する時に着用するタイベックスーツ、いわゆる防護服の着用体験もでき、テレビでは防護服を着て簡単に作業しているように見えましたが、実際には視界も狭まり、暑苦しく、動きにくいことを体感することができました。

最も期待していた実験では被覆管材の引張試験、急速加熱試験を行いました。中空円柱といった特殊な形状の材料の引張試験は条件が限定的なため大学では行えず、また、急速加熱バースト試験機のような特殊な機器も一般普及している機器ではないので大学にはありません。これらの設備を使って実際の環境を再現して実験できるところが素晴らしいと感じました。

今回の実習を通して原子力材料に関する知識及び関心がより一層大きくなり、将来、原子力に携わりたいという思いを再認識することができました。実習だけでなく、最先端の研究施設や研究内容も見させていただき、原子力分野の現状を知ることができる貴重な機会でした。

◇困難に直面した時にどう対応したか

引張試験のデータから材料特性のパラメータを算出する際、パラメータの定義が大学の講義で学んだこととは一部違うこともあり、データの解析に少し戸惑うことがありました。しかし、それぞれが大学の講義で学んだことを思い出してグループのみんなで話し合い、誰か一人だけが理解するのではなく、理解した人がいたらまだ理解できていない人に教えるという形で、グループ全体で課題を達成していきました。グループだけでなく何か分からないことがあれば実習担当の方に質問をすれば分かりやすく丁寧に教えてくださったので、疑問に思ったことや分からないことは積極的に周りの人と共有するように心がけました。

◇思い出に残ったこと

一つ目は、懇親会で若手職員の方や所長や副所長と現在の原子力事情や日々の業務内容をお話しすることができたことです。実習期間中に施設見学等で職場の雰囲気を感じることはありましたが、それだけでは仕事をしていて楽しいのか、やりがいはあるのかといったことは分からないので、実体験に基づいて原子力機構で仕事をしていてどう感じるかということを聞けたことはとても貴重な機会でした。また、原子力の専門知識を持った方々と福島事故のことであったり高速炉のことであったり、今後の日本における原子力の将来を左右するお話をできたことは自分自身の進路を考える上でも参考になるものでした。

そして二つ目は、やはり大学ではできない実験を見ることができたことが一番印象的です。日本でもここにしかない装置やこの実験のためだけに作られた装置などがたくさんあり、ここでしかできない体験をすることができました。加えて、それらの実験は専門性が高く原子力に直接関わる研究内容で、学生から見ると非常に高度に感じる一方で、研究という分野により一層魅力を感じるようになりました。

◇特にお伝えしたいことがあれば御自由にどうぞ

同じ期間にほかのテーマの実習をしている方がいて、中には3週間に渡って実習するテーマに挑戦している方や去年も実習を受けたという方がおられました。実習生の方々と話をして感じたのですが、私と同じように原子力に興味があって原子力機構の実習に参加したいという思いが強い方々が多いと思いました。私自身も去年、原子力機構の実習プログラムに参加したこともあって今年も参加したいという思いがあり、実習に参加する度に次はこのテーマの実習をしたいという思いが出てくるように感じました。それほど非常に充実した内容になっていると思います。もし、来年も私の研究テーマに生かせるような実習テーマがありましたら、次は1か月程度の長期間の実習テーマに応募してみたいと思います。



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