大学連携・学生受入

学生からの声 - 夏期休暇実習生 -

ライブセルイメージングよる放射線を照射した細胞の影響追跡
(量子ビーム応用研究センター 放射線生物作用研究ディビジョン 放射場生体分子科学研究グループ)


海保 隼大さん

茨城大学 工学部 生体分子機能工学科

◇志望理由と実習内容について

私は将来、放射線の人体に対する影響を無害化する薬を開発したり、山地での低コストで効率が良く環境負荷が少ない除染技術を開発したりするなど、福島第一原子力発電所事故で被害を受けた人々の助けになれるような活動や研究したいと考えております。そして、今回の夏期休暇実習での経験がそれを実現するために役立つと思ったので応募しました。それ以外の理由としては、実際に研究者の業務を体験することで、それに必要な技術について学び、また、研究者の方々が普段どのような生活をしているのかを垣間見ることによって将来研究者になる上での参考にしたいと思い、応募しました。

実習内容は大きく分けて二つあります。

一つ目は、Fucci化したHela細胞(ヒトの子宮頸がんの細胞)に10GyのX線(放射線)を10分間照射して、その経時変化をインキュベーター付きの蛍光顕微鏡で観察するというものです。Fucci化とは、細胞中の核が細胞周期のG1期には赤色、S期には黄色、G2・M期には緑色に光るようにする操作のことであり、この実習では無作為に選んだ細胞のこの色の変化を動画で追跡し、細胞の変化(分裂したり、融合したりするなど)を含めてエクセル上に記録しました。それを記録すると、その縦軸は時間を表すので、細胞周期のどの部分がどのくらい継続して、照射前と後でどう変化したのか分かるようになりました。このデータを比較することで、細胞の生存時間は放射線を細胞周期のどの部分(M期とか、S期など)で、また、その周期のどの時期(G1期の初期とか、G2期の終期など)に照射されたのかということに依存しそうであると考察することができました。

そして二つ目は、BJ細胞(ヒトの繊維芽細胞)にX線を照射することで生成したDNAの2本鎖切断箇所に、あらかじめ蛍光タンパクを結合させたその修復酵素が集まってくることで生成するFoci(蛍光タンパクがたくさん集積しているために明るく蛍光する点)を観察するというものです。この実習では、5GyのX線を5分間照射して実験を行ったところ細胞が死んでしまったので、線量を下げてもう一度実験を行おうとしたら、今度はX線発生装置が壊れてしまい、結局のところ新たに生成したFociを観察することはできませんでした。さらに今度は、X線の代わりに過酸化水素でDNAに2本鎖切断を入れて、Fociを観測しようと試みましたが、それが購入してから時間が経過していたためなのか、未だに理由は良く分かっていませんが、この実験も失敗に終わりました。

◇思い出に残ったこと

思い出に残ったことはHela細胞の継時変化を動画で追跡したことです。私は今までに個々の細胞が変化していく様子を観察したことがなかったので、この実習は大変貴重なものでした。今回使用したHela細胞はFucci化されているので、その核は赤、黄、緑に強く蛍光し、その色が絶えず変化していく様子は観察していてとても興奮しました。この実習では細胞に10Gyを10分間照射しているので、それが高い確率で死ぬ運命にあることは変わりないのですが、それはただ分裂するだけでなく、融合したり、核が5つあるものが生成したりするなど、一つ一つの細胞ごとに変化の仕方や生存時間の長さが異なり大変興味深かったです。実験以外にも様々な研究者の方々の研究内容を聞く機会を与えていただき、また、研究以外にもためになるお話を聞くことができて非常に勉強になりました。



戻る
PageTop