大学連携・学生受入

学生からの声 - 夏期休暇実習生 -

福島地区における放射性セシウムの環境動態研究
(福島環境安全センター 環境動態研究グループ)



北島 瑞希さん(九州大学大学院 総合理工学府 先端エネルギー理工学専攻)
澤崎 佑基さん(神戸市立工業高等専門学校 機械工学科 設計システムコース)


北島 瑞希さん

九州大学大学院 総合理工学府 先端エネルギー理工学専攻

◇志望理由と実習内容について

私が貴機構の夏期休暇実習を希望した理由は放射線の線量測定、放射線核種の分析に興味があったからです。

大学進学の時、放射線に興味がありました。そこで、放射化学を化学分野の一部として取り扱う学科を希望し合格しました。しかし、私が入学して間もない頃には放射化学を専攻する先生がいなくなって研究室が衰退したため、放射化学を学ぶことはほとんどできませんでした。大学院進学を控え、自分が高校生の時から思っていた放射線を学びたいという気持ちを捨てきれず、現在所属している粒子線を研究する研究室を希望し受け入れていただきました。

5月初め、各公的機関や民間のインターンの応募が始まり、ふと自分の学んできたことを振り返ってみました。私は放射線について学びたい一身で今まで進路を選択してきましたが、改めて考えると、放射線にまつわる物理学だけでなく今まで学んできた化学も好きなことに気付きました。放射性核種の動態調査には多方面からの知識が必要であり、特に放射線の線量測定と放射線核種の分析には化学や物理学やそのほかの分野の技術が用いられます。これらのことを踏まえて、今回の夏期休暇実習によって、普段は見ることのない化学と放射線分野の物理学の連携が見られることへの興味と、好きなことが生かせるかもしれないという思いから夏期休暇実習に応募しました。

私の貴機構での実習は、主にサンプルの採取と採取したサンプルのGe半導体検出器によるCs由来のガンマ線の放射能の分析でした。実際に森林、河川へ行き、リングやスクレーパーを用いた土壌サンプルの採取を行いました。河口域でのサンプリングも予定されていましたが、天候の都合上、以前に採取したサンプルの前処理のみを行いました。また、川俣町山木屋における長期空間線量率等測定にも参加しました。

大熊町の分析現場ではGe半導体検出器以外にも実際に分析に使用している機器を見学させていただきました。私は見学を行う前まで、放射性Csの分析には最新装置を用いた研究が行われているとばかり思っていました。しかし、実際は研究施設に大熊町の公民館を利用したり、臨時の装置を用いたり、大熊町にない分析機器があったりしました。想像と現状のギャップから、帰宅困難区域で分析を行う難しさを感じました。また、研究に私が知っている分析方法も多く使用されていたことを受け、大学での学習の大切さを感じました。

私は今回の実習に参加して本当に良かったと思っています。元々、知らなかったことを知ったり、メディアでしか知りえない情報を生で体験したりする素晴らしさを感じ、うれしくなりました。また、体験の中で、私が知り得ている知識とリンクするのはとても楽しかったです。さらに、現在の福島県を知らないことからくる誤解を解くことができてすっきりしました。

機会があればまた動態調査に参加したいと思っています。

◇困難に直面した時にどう対応したか

「報告」「連絡」「相談」である「ホウレンソウ」を最も大切に行動していたので、困難を予知したら、その都度、職員の皆様からどのように行動すべきか御教示いただきました。そもそも、皆様からいつもきめ細かい心遣いをいただいていたので困難に直面することがほとんどなかったです。

ただ、一つだけ夏期実習中に冷や汗をかいた出来事がありました。それは、私と同じ実習テーマで夏期実習に参加されていた方と一緒に作業して取得したデータの私の分を保存し忘れ、気が付いた翌日に彼は実習を終えて帰ってしまった時です。その時、私を指導されていた職員の方に彼と連絡を取っていただき彼にデータを送っていただくことで事なきを得ましたが、私のデータ管理の甘さ、作業速度の遅さを反省いたしました。その苦い経験を踏まえて、翌日以降は空き時間や退勤時間以降などにデータの取りまとめを全て行うことにしました。そのおかげで、データを取得してから取りまとめるまでの時間が短い方が記憶の定着が良いことも分かり、早めに作業する大切さを学びました。

◇思い出に残ったこと

一つは測定サンプルの採取、前処理、そして分析までの楽しさです。前述したように、知ることの楽しさや持っている知識から物事をみて現象を推測したり理解したりする学問的楽しさもありますが、純粋に作業そのものが楽しかったです。特にスクレーパープレートやリングでのサンプル採取は技量や経験が問われるので、いかに上手に取れるか挑戦するのは面白かったです。また、サンプル採取は炎天下の中で行われ、スクレーパープレートでの採取の間はずっと中腰で作業していたので、汗だくで腰を痛めてとても大変でした。サンプル採取を通じて改めて現場の作業での大変さが身にしみました。

サンプル採取所だけでなく、福島県の様々な場所に職員の皆様と御一緒させていただいた経験も思い出の一つです。特に印象に残っている場所は元々、福島県栽培漁業協会の施設があった場所です。そこは帰宅困難区域に指定されており、多くの津波で流された生活用品や服、全壊した建物などが事故当時のまま残っている地域でした。放射線量の高さに驚いた以上に、その現状の騒然さと、地震と津波の恐ろしさを感じて言葉を失いました。

これらの経験はデータには残らない貴重な体験です。貴重な体験をさせてくださった職員の皆様に改めて深く感謝申し上げます。

◇特にお伝えしたいことがあれば御自由にどうぞ

まず始めに、福島は素敵なところでした。自然が豊かで機会があればまた福島に伺って観光したいです。次回こそ隣県の仙台の牛タンを食べてみたいです。

私は今回の夏期実習を通じて実際に体験することの大切さを学びました。また、福島原発事故の影響や東日本大震災や津波の被害の予想と現実とのギャップを通じて、憶測だけで物事を語ることが出来ないことも同時に学びました。

私は現在、大学院で物理を勉強し研究する立場に立っています。化学を学部時代に学び、研究してきたバックグラウンドと現在の状況を比較して、物理の研究はその特性上、どうしても論理のみに走りがちな傾向にあるように思われます。化学の研究の場合、実験を頻繁に行い、実験結果を踏まえてから本を開くことがほとんどなのに対し、物理の研究の場合は本を読み、ひたすらパソコンに向かって作業するうちに一日が終わるということが少なくありません。

私が今回の実習で得たものがあるとすれば、放射線の知識や分析方法はさることながら、実習を通して感じたことを私自身の研究に投影し、改めて自分の研究のあり方について見直す必要があると気付いたことだと思います。今後さらに私が本当の意味で自身の研究について語れる人間になりたいと思います。





澤崎 佑基さん

神戸市立工業高等専門学校 機械工学科 設計システムコース

◇志望理由と実習内容について

私は福島第一原子力発電所事故以後、放射線が環境に与える影響や人体への影響などについてメディアの報道を通じて聞いていたものの、実際のところ、私が住んでいる神戸と福島は遠く離れているので実感が湧きませんでした。そのため、いつか実際に現地へ行って現状を見て、放射線や原子力に関する正しい知識を身に付けたいと思っていました。そんな時に原子力機構の夏期休暇実習の制度を知り、自分の関心があることが出来そうだったので参加しました。また、私は機会工学科の人間なので、この先の将来、原子力や環境動態と触れ合う機会がないかもしれないので技術者としての知見を広めるためにも、また、原子力を通じて機械工学のあり方を考えるためにも参加しました。

本実習ではセシウム環境動態について実習しました。森林や河川で空間線量を計測したり、土壌を採取しGe半導体検出器にかけて放射能濃度を測定して、森林や河川にどのようにセシウムが分布しているかを考察しました。また、河川の流量や濁度、土壌の粒度を専用の測定器で計測して河川でセシウムがどのように移動するかを考察しました。また、スギの枝をIP(イメージングプレート)にかけて枝にどれだけのセシウムが付着しているかなども計測しました。さらにはTODEM浮遊物質輸送サブモデルを用いて仮想河川での土砂の動きを予測して、増水時及び平常時の土砂の移動量及びセシウムの移動を解析しました。

◇困難に直面した時にどう対応したか

職員の方に質問したり、実習生同士で相談しました。私の独断で失敗してしまったり計測値を間違えてはいけないので、また、ささいな間違いが大きな失敗につながるかもしれないので困った時は職員の方や実習生に質問や相談をしました。

◇思い出に残ったこと

私は将来研究者になりたいと漠然と考えていますが、実習を通して研究は常に厳密性が大事であることを学びました。

例えば、一度使った器具は、前の試料が次の試料に付着しないようにしっかり拭いたり、洗い流したりする必要があるといったことです。そういった、ささいなことが後のデータに影響することを感じることができました。また、機械工学と原子力系はほど遠いものだと思っていましたが、Ge半導体検出器などを見ていると、ロボットハンドの制御によって動いていて、機械工学の分野においても原子力の分野と関わる機会があるかもしれないと思いました。これからも分野に関わらず色々なことに興味を持っていきたいと思っています。

◇特にお伝えしたいことがあれば御自由にどうぞ

職員の方は皆さん優しく、質問をしたら毎回、丁寧に回答をいただけて、もやもやすることなく様々なことを学ぶことができました。最後になりますが、迷惑をおかけしたと思いますが、本当にありがとうございました。



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